量産製品を生産している企業は研究試作、量産試作が行われる期間にE−BOM、M−BOMが
整備されます。
E−BOMは技術(設計)部門で使用しますが主な目的は設計の効率化です。
M−BOMは生産管理/製造部門において使われますが主な目的は調達と生産の効率化です。
M−BOMは生産管理システムの中核をなします。
製品のライフサイクルが終了するまで一部の設計変更を除いて両方の部品表は
安定して使われます。
テイ・ピー・ジット研究所
製造業改善モデル作成

技術部門の改善



E−BOM(設計部品表)とM−BOM(生産部品表)の連携
技術・生産品質データベース構築
創造能力発揮環境整
サマリー型部品表

ストラクチャー型部品表

----- 長所. 短所
サマリー型部品表 作成が簡単
図面作成の都度調達・生産部門に渡せる。

部品やユニットの標準化や共通化が進まない
E−BOMをそのままM−BOMに変換すると工程の進捗管理ができない。
M−BOMでストラクチャー型にするのに手間がかかる。

ストラクチャー型部品表

部品やユニットの標準化や共通化を進めやすい。E−BOMからM−BOMに変換しやすい。

作成工数がかかる(どのような構成にするか考慮する時間も含めて)

ストラクチャー型の部品表がはるかにメリットは多いのですが、中小企業や中堅企業でサマリー型からストラクチャー型に
完全に移行していない場合が多いようです。
また、一品受注の場合はリピートが無いということから、サマリー型が多いようです。
ただし、標準的なユニットを流用する部分のみストラクチャー型になっています。
E−BOMに工程情報[どのような手順(工程)で生産するか]、発注条件/生産条件などを付加すると
M−BOMになります。
設計の効率化を目指しながら作成するE−BOMを表の顔とすると、M−BOMは調達/生産の効率化を
目指す裏の顔になります。E−BOMを作成するときに、M−BOMのことを考慮に入れて作成することが重要です。
その考慮がE−BOMからM−BOMへの変換を効率よく行うポイントになります。
ベテラン設計者は長年の経験から固有の設計ノウハウだけでなく、調達、生産の情報が頭の中にあり、
不良が出にくい設計、作り易い設計(生産性が高い)、適切な部材(調達面からコストが低い)
すべの情報を考慮して設計作業をします。

しかし、過去の経験が豊富な長所が、短所になる場合があります。
それは新規、革新的なものへのチャレンジ精神が小さくなるということです。
新人あるいは中堅設計者は過去の経験・情報に比例して、非効率な設計や調達・生産のことを考慮に
入れないで設計するために、品質、コスト、納期の面で問題を発生する場合があります。
しかし、長所としては、新規の物へのチャレンジ、好奇心が旺盛なため、次の利益の柱になる
新技術、新製品を生み出す可能性を秘めています。

ベテラン設計者の豊富な経験と新人/中堅の新規性へのチャレンジ精神を生かす仕組みが必要です。
それらのTOOLとして、PDM(製品情報管理=Product Data Management)、

KM(ナレッジマネジメント=knowledge management)があります。
PDMは設計、開発から製造、販売、保守に至るまでの製品情報を管理します。
CAD、仕様書など電子化された情報を管理します。部門を超えた情報を共有化し、
製品開発工程の効率化、コスト削減、リードタイムの短縮、コンカレントな開発などを可能にすることを目的とします。

KMはナレッジマネジメント (knowledge management)といい、知識の共有、継承、社員能力向上などにより、
問題解決能力や創造性発揮、技術的革新を生み出すきっかけとなるような知識データベースを構築することを目的とします。
いずれも、構築工数が多くかかることと費用がかさむことが難点です。
また、利用部門が限られるため、 真に有益な情報を集めるのが大変です。
結果として、ユーザーがなかなか使ってくれないという悩みが発生します。
その原因の主なものは、PDMやKMがどちらかというと開発・技術・設計部門よりのソフトの場合です。
営業、調達、生産部門から発生する重要な一次情報がなかなか蓄積されないのです。
どうしても開発・技術・設計部門の現場で発生した情報に偏りがちです。
営業、調達、生産部門の人達のアクセス率が低下していきます。
そうすると有益な情報が蓄積されないで形だけのシステムになるのです。

どのようにしたらよいでしょうか。
それは、技術データベースと生産管理(品質含む)データベースを連携させることです。
業務を遂行していく段階で自然に情報が集まるしかけです。核になるのはE−BOMとM−BOMです。

キーはE−BOMとM−BOMにあります。(TP−JIT研究所はこれらの構築を支援します。


技術部門に限ったことではありませんが、創造能力や問題解決能力を発揮しやすい環境を
作り上げるのは一長一短にできるものでありません。
また、創造性があるかどうかは個人の資質に依存するところが大きいのです。

しかし、あるレベルまでの創造能力や問題解決能力は養成することが可能です。
キーワードは暗黙知の形式知化です。

ハンガリーの科学/哲学者マイケル・ポランニーはノーベル賞や世界的な発明が生まれるきっかけは
何か、など科学を哲学的に考察しました。
分かりやすく言うと革新的なアイデアがパッとひらめく原因はどこにあるのだろうか、というようなことです。
ポランニーはパッと思いつくひらめきは既に脳の中にある(醸成された)ものとしています。
本人が通常は意識していないがある瞬間すっと出てくるのだと解説しています。
また、ポランニーは名医の診断や自転車の乗り方は言葉で表せない知識を『暗黙知』として解説しています。

日本では、野中郁次郎氏が、これを参考にして暗黙知と形式知の概念を体系化しました。
暗黙知は経験や勘に基づく知識のことで、言葉などで表現が難しいものです。
形式知は文書や言葉で表せる知識です。
@暗黙知から暗黙知の段階
組織で仕事を経験する過程で、暗黙のうちに考え方、技術、技能を共有する。
ひとつひとつ言葉で言わなくても、高レベルの仕事ができる暗黙知が形成されている

A暗黙知から形式知の段階
暗黙知を、言葉、文章や図、映像、式などを用いて、第三者が分かるように表現する

B形式知から形式知の段階
形式化された知識を組み合わせるなどしてから新たな知識を創る

C形式知から暗黙知の段階
形式知化された知識を活用して仕事をする過程で、新たな経験や学習をする。
その中でより高度な暗黙知が形成される。
暗黙知を形式知化して、その組織の構成員のレベルが上がると、相乗効果で上位のレベルの暗黙知が生まれる。
また、その暗黙知を形式知化するというプラスのスパイラル効果を上げています。

暗黙知の形式知化については、多くの企業で取り組まれています。
トヨタは全世界で生産する車を同じ品質にするために、暗黙知の形式知化に大々的に取り組んでいます。
NHKでも紹介されました。

暗黙知を形式知化するということは、マニュアル(文章、図形、写真、映像など)で暗黙知をいかに
表現するかということです。

最後に残ったノウハウは、熟練した先輩がOJT(仕事を通じた訓練)で部下に伝えることになります。
これらの仕掛けを比較的安価に全員参加で構築するのがポイントです。


テイ・ピー・ジット研究所
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